床の傾斜角及び基礎ひび割れの許容値の目安
品確法の第70条には「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準を定めることができる」とあり、建設省告示1653 号(平成 12 年 7 月 19 日)により「技術的基準」が定められています。
この基準では瑕疵の判定の目安(判定基準で無い事に注意)として、建物の傾斜や亀裂の大きさ等について以下のように区分しています。
レベル | 床傾斜の程度 | 基礎ひび割れの程度 | 瑕疵の存する可能性 |
1 | 3/1000未満の勾配の傾斜 |
レベル2及びレベル3に 該当しないひび割れ |
低い |
2 | 3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜 | 幅0.3㎜以上0.5㎜未満のひび割れ(レベル3に該当するものを除く) | 一定程度存する |
3 | 6/1000以上の勾配の傾斜 |
①幅0.5㎜以上のひび割れ ②錆汁を伴うひび割れ |
高い |
この点、レベル1程の傾斜・ひび割れですと中古住宅の調査において普通に見受けられます。
また、レベル2に関してもさほど珍しくなく見受けられます。
レベル3になりますと、基礎のひび割れに関してはさほど珍しくなく見受けられますが、床の傾斜に関してはある程度稀な印象です。
ただし、個々の態様によって症状の軽重は全く異なるので、上記数値から紋切り方に判断するのは好ましくありません。
上記、「技術的基準」においても、下記の文言が付加されています。
やはり専門家に調査してもらうのが一番良いのではないでしょうか。
・特殊な建築材料又は構造方法を用いた住宅については、その建築材料又は構造方法の特性に配慮した上で、この基準を参考とすること。
・この基準における「構造耐力上主要な部分における瑕疵」は、大規模な修補が必要となる比較的重要なものから局部的な修補のみが必要となる比較的軽微なものまでを含むものであること。
・この基準は、構造耐力上主要な部分における瑕疵の有無を特定するためのものではないため、レベル1に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する場合があり、また、レベル3に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存しない場合もあること。
ちなみに、あまりに大きな傾きとなりますと、建物としての機能障害の可能性は当然として、身体への影響も懸念されるところです。
家の傾きと健康障害で下記の表が日本建築学会より示されていますのでご参考下さい。
なお、健康障害には個人差があることに注意してください。
傾斜角 | 健康障害 | |
度 | 分数(ラジアン) | |
0.29° | 5/1000 (=1/200) |
傾斜を感じる。 |
0.34° | 6/1000 (=1/167) |
不同沈下を意識する。 |
0.46° | 8/1000 (=1/125) |
傾斜に対して強い意識、苦情の多発。 |
0.6°程度 | 1/100程度 | めまいや頭痛が生じて水平復元工事を行わざるを得ない。 |
~1° | ~1/60 | 頭重感、浮動感を訴える人がある。 |
1.3° | 1/44 | 牽引感、ふらふら感、浮動感などの自覚症状が見られる。 |
1.7° | 1/34 | 半数の人に牽引感。 |
2°~3° | 1/30~1/20 | めまい、頭痛、はきけ、食欲不振などの比較的重い症状。 |
4°~6° | 1/15~1/10 | 強い牽引感、疲労感、睡眠障害が現れ、正常な環境でものが 傾いて見えることがある。 |
7°~9° | 1/8~1/6 | 牽引感、めまい、吐き気、頭痛、疲労感が強くなり、半数以上で睡眠障害。 |
日本建築学会:建築士のためのテキスト 小規模建築物を対象とした地盤・基礎より引用
前の記事へ
« 「別荘設計のポイント:非日常を演出する空間づくり」次の記事へ
「地方でのインバウンド需要を取り込むための設計」 »