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「既存建築物の現況調査ガイドラインが示す、建築ストック活用の新たな方向性」

2024年12月、国土交通省は「既存建築物の現況調査ガイドライン(第1版)」を公表しました。このガイドラインは、既存建築物の有効活用を促進するため、増改築や大規模修繕を行う際の現況調査の具体的な手順とその活用方法を定めたものです。建築物の安全性や法令適合性の確認を効率化し、既存建築ストックの有効活用を支援することを目的としています。本記事では、このガイドラインの概要とポイントを詳しく解説します。

公式ガイドラインの詳細は、こちらをご覧ください。


1. ガイドライン策定の背景

近年、既存建築物を活用した増改築やリノベーションの需要が高まっています。しかし、既存建築物に対する現行の建築基準法令の適合性確認が不明確な場合や、手続きが煩雑であることが障壁となるケースが少なくありません。これにより、既存建築物の利用価値を最大限に引き出すことが難しくなっていました。

特に、建築基準法改正以前に建設された建物(既存不適格建築物)において、増改築時に法令適合性が求められるため、計画が進まない問題がありました。このガイドラインは、こうした課題を解消し、既存建築物を効果的に活用するための指針を示しています。


2. 現況調査ガイドラインの目的

このガイドラインが目指すのは、既存建築物に関する以下の課題解決です:

  1. 現況調査の手順を明確化
     建築士が行う現況調査の方法を体系化し、増改築時の法令適合性確認をスムーズに進める。
  2. 確認審査の円滑化
     現況調査結果をもとに、確認審査で必要な情報を正確に提供する。
  3. 既存不適格建築物への対応
     法令改正前の基準で建築された建物に対する緩和措置の適用範囲を明確化し、実務での判断基準を提供する。

3. 現況調査の具体的な手順

ガイドラインに基づく現況調査は、大きく以下の3つのステップで構成されています。

調査1:検査済証の交付状況等の調査

建築物の直近の工事履歴を確認し、検査済証の有無や建築工事着手時の基準を調査します。これにより、建物がどの時点の基準に適合しているのかを把握します。

調査2:現地調査

調査1をもとに、現地で建物の現行規定への適合性を確認します。外観調査や内部の構造調査を行い、耐震性能や火災時の安全性、避難経路の確保などを評価します。

調査3:増改築等の計画作成

現況調査の結果に基づき、必要な補修や改修、緩和措置の適用を検討します。この段階で建築基準法令への適合性が判断され、確認審査への準備が整います。


4. 既存建築物の有効活用がもたらすメリット

(1)経済的な価値の向上

既存建築物を活用することで、新築よりもコストを抑えつつ、付加価値の高い建物を実現できます。また、既存不適格建築物への緩和措置を適用することで、利用可能な面積や用途が拡大する可能性もあります。

(2)環境負荷の軽減

既存建築物の活用は、建設廃材の削減や資源の有効活用につながり、環境負荷を軽減します。特に、省エネ性能を高める改修を施すことで、持続可能な社会の実現に寄与します。

(3)都市再生や地域活性化への貢献

既存建築物をリノベーションすることで、地域のランドマークや商業施設として再生させることが可能です。これにより、地域経済の活性化や住民の生活環境の向上に寄与します。


5. ガイドライン活用のポイント

  1. 専門家への相談を徹底
     現況調査や緩和措置の適用には、建築士や確認申請に詳しい専門家の協力が不可欠です。

  2. 報告書の活用
     ガイドラインで示される調査報告書のフォーマットを活用することで、確認申請が円滑に進みます。報告書には建物の現況や課題、緩和措置の適用可否が詳細に記載されます。

  3. 地域ごとの条例への配慮
     地域特有の条例や行政の指導も考慮しながら、調査結果を適切に反映させることが重要です。


6. まとめ

「既存建築物の現況調査ガイドライン」は、建築物の安全性確保と有効活用を両立させるための実務的な手引きです。このガイドラインの導入により、増改築時の手続きがスムーズになり、既存建築ストックの価値を最大限に引き出すことが可能となります。建物所有者や管理者にとって、このガイドラインは重要なツールとなるでしょう。

公式ガイドラインの詳細は、国土交通省のPDF資料をご覧ください。

既存建築物の活用や増改築を検討中の方は、まずこのガイドラインを基に専門家に相談することで、安全かつ効率的な計画を立てることができます。

 
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