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リノベーションの際に注意すべきこと

■リノベーションという選択肢

 住まいを建築する際の一つの選択肢として、リノベーションを考えられる方も少なくないと思います。中古住宅の有効活用や、住み慣れた建物を活かしたいという考え、建築コストを抑えたいという考え、又は、現在の居住場所を工事する場合には、住みながらに済ませたいなど理由は個々にそれぞれあるかと思います。

 確かに、リノベーションでは新築にはない上記のメリットを色々と持ち合わせており、やり方によっては費用対効果も含め新築以上のリターンを実現させることも不可能ではありません。

 一方、リノベーションでは新築にはないデメリットといいますか、ハードルも幾つかあります。
 なお、以下は木造建築物を対象とした記述となっています。他の構造となりますと、共通部分もありますが、また色々と違った問題があったりしますので、ここでは木造のみの注意点を対象にしています。

 

■耐震性及び防水性の問題

 おそらくリノベーションを躊躇してしまい選択肢から除外してしまう大きな理由の一つがここではないかと思います。

 確かに、基礎をはじめとした躯体は経過年数とともに徐々に劣化してしまいます。また、昔の建築は今ほど耐久性のある材料が一般的に普及していなかったり、また法整備が今ほど整っていないという側面もありますし、そもそも建築に対する意識が今ほど高くはなかったという時代背景もあったりします。

 まずはじめに、雨漏りの原因箇所、十中八九が屋根とか外壁の欠陥箇所になりますが、この点については部分的な改修でカバーできればそれでいいでしょうし、そうでない場合は最悪全面的な葺替え又は張替えによる対処が必要となります。

 雨漏りがある場合は、住まいのとしての最低限の機能を果たさないですし、そこまでいかない雨漏りでも急激に建物を劣化させる原因となり得ますので、この点については専門家による調査の上、問題があれば最優先で直すべき事項となります。

 一方、基礎の耐久性が劣っている場合は、各種補強工事が必要になったりするのですが、あまりに古い建物(1981年以前に建てられた家)の場合ですと、基礎に鉄筋が入っていない可能性もあるため、現在並の万全な建物まで引き上げることになると相当な費用が掛かかります。

 この点、基礎に関しては、前記雨漏りのように実被害がないことも多いため、地域的特性や建物の規模・構造、劣化進度、予算面などの多角的観点からの総合的な兼ね合いにより改修するか否か判断すべきです。仮に基礎の大規模な改修をリノベーションにパッケージしてしまうと、リノベーションのコストメリットがほぼ相殺されてしまう程予算が膨らみやすい傾向にあるからです。

 従って、個人的な意見ですが、基礎が全くダメな物件、例えば沈下量が大きいとか、危険な構造クラックが相当なスケールで入ってるとか様々ありますが、これに関しては、一度壊したら建築不可等の規制があるといった特段の事情がない限りは、リノベーションの方向性を除外すべき理由の一つと考えます。もちろん、規模の小さい問題であれば部分補修で対処可能であったりしますので、この辺りも専門家調査を実施の上、検討が必要となります。

 なお、基礎の他にも地震力を負担する構造部材が各種ありますが、木造で言えば、大概は交換ないしは代替可能ですので、土台が全部腐朽してるとか、桁の大部分まで蟻の被害に遭っているとかの相当規模の問題がない限りはリノベーションの方向性を除外しなくても問題ありません(外壁全面張替なら事前調査時に分からなかった問題もほぼ分かりますし、最新の耐震技術を取り入れることも可能ですので外壁の張替を取り入れるか否かはリノベーションにとってはかなり重要)。

 

■断熱性(+防湿性)の問題

 これも、おそらくリノベーションを躊躇してしまい選択肢から除外してしまう大きな理由の一つになるかと思います。

 昔の建物ですと、断熱材が入っていなかったり、仮に入っていたとしても低性能のものだったりしますので、冬場、床が冷たくて仕方ないとか、反面、夏場、屋根からの焼け込みにより暑くて仕方ないとか(冬場は寒い)、または結露が酷いとか、更には暖房・冷房の効きが非常に悪かったりと、快適な生活からは程遠い現実に直面することが少なくありません。

 この点、外周面の仕上げ材(屋根直下天井及び内壁・外壁両方もしくは一方)を解体するような工事が伴う場合には、壁面・屋根裏断熱材を施工することが可能となりますので、当問題はクリアできますが、費用はだいぶ掛かってしまう可能性があります(解体工事がある分、新築より高いですし、サッシまで交換しないと意味をなさない場合が多い)。ましてや、リノベーションを検討される大半の建物が、最近の建物と異なり、おそらく規模が大き目であると予想されますので、そのスケールデメリットからもリノベーションのコストメリットが希釈化されることになります。

 予算に余裕があったり、省エネ関係の補助金枠を利用したい等のご希望があれば話は別ですが、ここは部分断熱区画に収める事や減築も一つの手になるかと考えます。

 ここで、断熱性能を、前記基礎のようにリノベーションの方向性の除外理由にしてしまうと、リノベーション対象としてはおそらく市場に物件はないであろうといっても過言ではありませんので、ここはある程度寛容になる必要があります。

 なお、昔の建物ですと床下の防湿措置が弱く、床下が湿気ている可能性が十分にありますので、床下断熱材の補強の際には、それに伴う床解体が不可欠ですので、併せて床下の防湿フィルム+防湿コンクリートといった防湿措置も実施されるとよいでしょう。外壁面を施術する場合には同様に、湿気措置を実施して下さい(現在の建築のデフォルトなので、ほとんどの施工者が行うはずです)。

 

■設備面

 一般的には、電気設備、給排水衛生設備、換気設備、冷暖房設備がありますが、たいていは現在の設備の性能や利便性と比較し劣っています。場合によってはそれがノスタルジックでいいと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、現在の設備に慣れてしまっている大多数の人が不便と感じることと思われます。

 ただ、この点につきましては、もちろん予算の多寡にもよりますが、どうにでもなることが多いです。当然に費用は掛かりますが、ほとんどのモノが交換ないしは新設可能でありますし、上記の構造部分の工事と異なり、各設備単位ではとんでもないコストが掛かることも少ないです(床暖設置とかセントラル換気システムなどハイスペックな設備を導入すれば話は別です)。また、そもそもリノベーションを選択肢に上げる時点で、一目瞭然であるこの点はほとんど織り込んでおられることでしょうし、費用対効果・体感も明らかですので、構造面と比べ予算投下の抵抗は少ないのではないかと思われます。

 ただし、あまりに古い物件ですと電気配線自体がダメなケースもあるので、その辺りは専門家による事前調査が必要です。

 屋内配管はケースによりますが、たいていは引き直しと考えていただいた方が無難です。

 また、場合によっては合併浄化槽への交換や下水道への繋ぎ込みといった、予期せぬ大きな工事が発生する場合もありますのでその点は注意が必要です。

 

■間取りの制約

 リノベーションでは新築と異なり、間取りに制約が生じてしまうことがあります。

 新築でも予算面や敷地面、または法的な制約などにより間取りに制約が生じてしまうことがもちろんありますが、それとは別の意味での制約です。

 例えば、既存の間取りを一切無視して、好き勝手にプランニングするのも不可能ではありませんし、斬新ならではの面白みはありますが、現実的ではありません。

 なぜなら構造体(設備レイアウトも)を抜本的に変更することになりかねず、リノベーションのコストメリットを著しく減退させることがあるからです。

 よって、プロとしてはまず、現状をできる限り生かしつつ、なるべく元の構造を崩さないようにプランニングするのが一般的です。

 他面、昔の建物は、例えば台所が単独で北側の暗い場所にあったり、また廊下を挟んで小さい部屋がやたらに多いなど、最近のライフスタイルにはそぐわないものも多いため、現状の間取りに縛られ、あまりに消極的になり過ぎても使い勝手の悪い古臭い建築になってしまうので、その辺りの大胆かつ繊細なバランス感覚は設計者の腕の見せ所になるかと思われます。

 

■結論

 費用面で言えば、新築と異なり躯体の大部分や既存利用可能部分の工事費が省略できる反面、新築にはない解体工事が付加されますので、建物の潜在的な性能を向上させる工事をどの程度盛り込むかによっては、リノベーションのコストメリットも思いの外大きくないことがあります。

 ただし、当該敷地の既存建物を解体した後の新築までとなりますと、やはりリノベーションの方がコスト面で有利なのが一般的かと思います。

 あとは、上記にありますように、基礎や屋根・外壁の経年状態の如何に大きく左右されることになります。

 昔の建物は、最近の建築とは異なった合理性があったりと良い面もありますので、現代の建築仕様や設備をうまく取り入れることにより、同程度の予算の新築では到達できない傑作に仕上がることも可能ですので、是非リノベーションにも挑戦してみて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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